ポルトガルに長期滞在できて、勉強・仕事・遊び・旅行…など、自由度の高い過ごし方ができるワーキングホリデー制度。この記事では、ポルトガルのワーホリの概要やビザの取得に必要な書類、申請スケジュール、必要資金から現地での過ごし方について、筆者の経験談も交えてご紹介します。ポルトガルでのワーホリを考えている方はぜひチェックしてくださいね。
ポルトガルのワーホリとは
【開始年】 2015年7月
【目的】日本とポルトガルの青少年の交流や相互理解が促進され、両国の友好親善が一層強化されること
【内容】上記内容を目的とし、入国からの1年間の滞在を許可し、かつ、休暇の付随的な活動としての就労を認める
ワーキングホリデー制度、略して「ワーホリ」は、1980年に日本・オーストラリア間で初めて開始されました。2020年4月時点で、26の国・地域との間でワーキングホリデー制度が導入されています。旅行とは異なり長期滞在が許されている点、そして滞在先も、過ごし方も好きに選べるという自由度の高い点が魅力の制度です。
日本・ポルトガル間のワーキングホリデー制度は、2015年から開始されました。歴史はまだ比較的浅く、前例・エージェントともに数が乏しいのが現状です。ポルトガルでワーホリは「Working Holiday」または「Férias-Trabalho」と呼ばれますが、ワーキングホリデー制度自体がポルトガル国内でもまだあまり認知されていません。
ワーホリビザ申請のおもな条件
・年間発給枠(定員)…なし
・期間…1年間(他ビザに切り替えての延長不可)
・対象年齢…満18歳以上30歳以下(申請時)
・申請料…無料
・ポルトガル滞在を可能とする十分な資金があること
ポルトガルのワーキングホリデー制度で、ほかの国と大きく異なるのが申請時の残高証明の金額です。ワーキングホリデー制度が導入されているヨーロッパのほかの国で必要な残高証明額はおおよそ30万〜50万。一方でポルトガルの場合、残高証明における必要額は16,000€(日本円でおよそ200万円強)と、桁外れに高いです。
つまり、ポルトガル現地でバイトなどにより収入を得て生計をたてる予定の人も、ビザ申請の段階で200万円ほどの貯蓄ができていることが求めらるのです。
ポルトガルのワーキングホリデー制度は定員無し・申請料無料の点はハードルが低いと言えますが、まずは必要資金を貯める必要があるので、前もった計画が必要です。
ワーホリビザ申請に必要な書類
- ビザ申請申込書 (大使館HPより入手)
中期滞在査証申請用の統一フォーマット(英文またはポルトガル語いずれか)を使用します。日本語のサンプルもあります。
- 証明写真1枚(3cm×4cm)
申請書には貼付せずに提出します。ビザに印刷される写真です。
- パスポート
12ヶ月以上の残存有効期間があることを確認しましょう。(原本およびコピー1枚)
パスポートは大使館に預けることになるので、ビザ申請期間中の海外旅行はできません。
- 往復航空券の予約確認書(原本)
往路のみの航空券を購入した場合は、復路の航空券を購入するための資金を有している証明が必要です。残高証明書に復路航空券代を加算して提出します。(+20万ほどが目安)。
- 英文健康診断書
特に指定項目等はなく、ごく基本的な内容の診断書(身長、体重、視力、聴力、 血圧、問診など)で問題ありません。
- 海外旅行傷害保険証明書類
ポルトガル滞在中の緊急治療および日本への送還費用を含む病気や怪我の治療費を保障するもの。
- ポルトガルでの犯罪有無を確認する要請書
ポルトガル大使館領事部 中期滞在査証ページの f)Requerimento 用紙を使用。
- 犯罪経歴証明書(申請費:無料)
発行より3ヶ月間有効。取得後、外務省によるアポスティーユ証明が必要です。※開封無効なので要注意
- 英文残高証明(16,000€ほど)
残高に余裕を持たせたい場合は、最初に英文残高証明書を取得してから、申請に必要な航空券の購入や海外旅行傷害保険の契約を行うことをおすすめします。
- 宣言書
ポルトガル大使館領事部 中期滞在査証ページの m)Declaração 用紙を使用。
上記の申請書類のうち可能なものは、それぞれ1~2部のコピーをポルトガルに持っていくことをおすすめします。行政手続きに必要な提出書類を揃えるときに役立つことがあります。筆者の場合は、NIF(納税者番号)の取得時に、日本の住所が英語で記されていた英文残高証明書が申請書類として使えました。
※詳細や最新の情報はポルトガル大使館HPをご覧ください
ポルトガル大使館領事部
〒102-0083
東京都千代田区麹町3-10-3 神浦麹町ビル4階
Tel: (03) 5226-0614
参考:「ポルトガル・日本 青少年ワーキングホリデー協力に係る覚書」
ワーホリまでのスケジュール
ここからは、筆者が2017年から2018年の1年間、ワーキングホリデー制度を利用してポルトガルに滞在した時のスケジュールやかかった費用をご紹介します。ひとつの参考にしてくださいね。
1. ワーキングホリデーの期間を決める
2. ポルトガル大使館に電話をしてビザ申請の予約を取る
※渡航日は、申請日からおよそ2ヶ月後が目安でした。ワーキングホリデー期間を決めたら、なるべく早く電話で申請スケジュールの確認・予約することをおすすめします。
3. 航空券購入、到着日のホテルを予約(申込書に記入する必要があります)
4. その他ビザ申請における必要書類集め
銀行:英文残高証明
病院:英文健康診断書
警視庁または各都道府県警察:犯罪経歴証明書
外務省:アポスティーユ証明(郵送または窓口)
5.ポルトガル大使館にてビザ申請手続き
※ビザ発給後のパスポートの返却はレターパックによる自宅郵送のため、返送用のレターパック(510円)封筒を持参しましょう。大使館近くに郵便局があります。
6.自宅にビザ到着。荷造りをして出発!
ビザ申請のタイミングによっては、学校の新学期などのタイミングと重なり時間が想定以上にかかることもあります。余裕を持ったスケジューリングがポイントです。
【補足】
ポルトガルへの入国後、発給されたビザの種類によっては「一時滞在許可証」の申請を、また入国方法や到着日の滞在先によっては「入国宣言」を、最寄りのSEF(移民管理局)で行う必要がある場合があります。
参考:在ポルトガル日本国大使館HP
ワーホリに必要な資金の目安
住む場所や過ごし方によってさまざまですが、筆者の場合、渡航前はおよそ35万円、渡航後の生活費は丸1年で105万円ほどがかかりました。これに現地での語学学校などの学費、そしてポルトガル国内外の旅行代が合わさり、ざっと200万円強がワーホリ生活にかかった費用です。
生活費は大都市の中心部になるほど高く、田舎になるほど安くなります。筆者はポルトを拠点としましたが、リスボンに住む場合はもう少し高く、もっと小さな町や村で生活をする場合はもう少し安くなるイメージです。
<<参考>>
渡航前・ビザ申請費用…およそ35万円
航空券(往復):およそ20万円
健康診断書:およそ1万円
海外旅行傷害保険:およそ15万円
※申請時の残高証明€16,000は含めません
渡航後(生活費)…およそ105万
(1ヶ月の生活費)
家賃(水光熱費・Wi-Fi込み):€350(約46,000円)
交通費(定期券) :€30(約4,000円)
携帯代:€15(約2,000円)
食費(自炊+外食):€120(約15,000円)
生活用品・洋服:€80(約10,000円)
交際費:€80(約10,000円)
生活費/月 計 約8,7000円
ワーホリ期間中の過ごし方
ここからは、ポルトガルでのワーキングホリデー期間中の過ごし方についてです。何といっても自由度が高いのがワーキングホリデー制度の魅力。旅行・勉強・仕事と、それぞれの目的に合わせた過ごし方ができます。
以下はポルトガルのワーキングホリデー生活中の過ごし方の一例です。
語学学校に通う・大学の短期プログラムに通う
ポルトガル語を学びたい人にとっても、ワーキングホリデー制度はぴったり。ビザには就学に関しての制限はないので、1年を通して好きなだけ学ぶ場に身を置くことができます。友達作りもほとんど一からのポルトガルでの生活。同じポルトガル語を学ぶ友達や、困ったときに相談できる学校の先生に出会えることも、学校に通うことの大きなメリットでしょう。
リスボン、ポルト、ファロなど外国人が集まる大都市にはプライベートの語学学校も複数あります。また、大学で社会人向けに開催されているポルトガル語の短期授業を受講する方法もあります。
(一例)
・ポルトの語学学校…約20万円/月
(グループレッスン・午前午後6コマの授業×週5日・授業後のアクティビティ込み)
・ポルト大学ポルトガル語講座…約4万5千円(2月〜6月・週2回)
アルバイトをする
「ワーキングホリデー」と聞くと、仕事をしながらその国で生活をする、という印象がありますよね。しかし、ポルトガルについていえば、仕事を得るハードルは高いと思っていたほうがよいでしょう。
2020年のポルトガルの失業率は6.8%。さらに25歳以下の若者に絞ると、その失業率は22.6%にものぼります。一時期よりは改善が見られるものの、期限付きのビザを持った外国人に仕事を与えるよりは、生活のために働かなくてはならないポルトガル国民のために仕事を与えよう、という意識の方が圧倒的に高いことを認識しておくことが必要です。また、2021年時点での最低賃金は665 € (約8.5万円)/月で、レストランや観光ガイドなどの職業では、ほぼこの最低ラインでの就労をしている人が少なくありません。
ポルトガルのワーキングホリデービザの取得に必要な16,000€の残高証明は、ポルトガルで生活する1年の間就労をしなくても、または十分な収入が得られなかったとしても、生活ができるための資金を持っていることを証明するためのものでもあると思われます。
一方で、もちろんポルトガルでワーキングホリデー期間中に仕事をしたケースも存在します。主な仕事としては、レストランスタッフ、ホステルのスタッフ、観光ガイドなどが挙げられます。職探しはインターネットでの情報集め、直談判や知人のツテがメインです。住み込みタイプでのファームステイを募集している農家などにあたってみるのもひとつの手段でしょう。筆者は、ドウロ地方でワイン用ぶどうの収穫のお手伝いをするのが目標のひとつだったので、収穫が始まる9月末からドウロ地方の町に滞在をし、手伝いをさせてもらえるワイナリーがないかどうか聞いて回りました。
また、現在はパソコンと通信環境さえあれば、世界のどこでも仕事ができる時代。必ずしもポルトガル現地で働かなくても、リモートワークを活用して収入を維持しながら、ワーキングホリデー生活を楽しむことも候補のひとつです。
ポルトガル国内・ヨーロッパ各国などへの旅行
仕事や学校の休みを使って旅行となると、1週間~2週間の限られた期間で急いで行きたいところを巡ることになってしまいがち。しかし、ワーキングホリデーの場合、行きたかった町・国を好きなタイミングで、好きな時間をかけて巡ることができるのも旅行好きの人にはたまらない魅力ではないでしょうか。
ポルトガルは、あまり名の知られていない町や村にこそ、奥深い魅力が詰まっています。短期間の旅行ではなかなか行くことが難しい場所にも、ふらりと旅ができるのは長期滞在のメリットですね。
また、ポルトガルはシェンゲン協定の加盟国なので、EU各国間の移動は基本的にパスポート無しで移動可能。さらにアフリカ大陸や南アメリカ大陸など、日本からのアクセスは難しく、遠く感じていた国々への直行便がリスボンやポルトから出ているなど、ポルトガルを拠点にさまざまな国を訪れることだって可能です。
※シェンゲン協定加盟国は、EU27ヶ国のうちの22ヶ国と、EFTA(欧州自由貿易連合)の4ヶ国です。(2021年8月現在)
ポルトガルでワーホリをするメリット・デメリット
最後に、数あるワーキングホリデー締結国のなかからポルトガルを選ぶメリット、デメリットについてお伝えします。
ポルトガルでワーホリをするメリット
・ポルトガル語が学べる…ポルトガルは世界的に見ても使用人口の多い言語です。そして、アフリカを中心とするポルトガル語圏の人口増加に伴い、今後ポルトガル語の使用人口はますます増加すると予想されています。将来的にも、ポルトガル語の価値は高いと言えるでしょう。
・英語だけでも生活できる…若者を中心に、英語が話せるポルトガル人は多いです。リスボンやポルトなど、外国人が多く行き交う町では英語だけでも問題なく過ごせます。
・日本食を思わせる食文化…魚介類の豊富さ、お米を食べる文化など、日本食と通じるポルトガル料理。どの料理を食べても、どこか懐かしい味わいでほっとするおいしさです。親しみやすい料理の数々に、日本食への恋しさを感じないまま1年が過ぎてしまうかもしれません。
・気候の良さ…ポルトガルには、日本と同じく四季があります。しかし、夏は湿気のないカラッとした陽気、そして冬の冷え込みも南ヨーロッパという土地柄厳しすぎることもなく、1年を通して過ごしやすいのが魅力です。
・物価の安さ…ヨーロッパの国々のなかで、比較的物価が安いポルトガル。近年は大都市を中心に物価の上昇が続いていますが、それでも生活の工夫次第で安く生活費を抑えて暮らすこともできます。
ポルトガルでワーホリをするデメリット
・十分な収入が見込めない…就労の難しさや最低賃金額を踏まえると、現地で働くことによる十分な収入は見込めないと想定したほうが良いでしょう。
・行政手続きの難しさ…ネットではポルトガルでの行政手続きの複雑さや不明瞭さが度々話題になっていますが、こればかりは「実際に行ってみないとどうなるかわからない」という印象。「場所によって違う」「時期によって違う」「人によって違う」からです。
必要だと思っていたことが必要なかった、聞いていた情報と違う書類を要求された…などの経験談の数々からも、行政手続きに関しては人それぞれと思って、その場その場での柔軟な対応が必要とされるでしょう。 「さぁ、自分の場合はどんな手続きをすることになるのか」と、その状況も楽しんだもの勝ちです。
まとめ
まだまだ歴史が浅く、情報も少ないポルトガルのワーホリ事情。ですが、ポルトガルに住んでみたい、と願う人にはぜひチェックしてもらいたい滞在方法です。思い思いの過ごし方をしながら、ポルトガルで暮らす毎日はきっと特別なものになるでしょう。
※ワーキングホリデー制度については今後変わる可能性がありますので、最新の情報は大使館HPなどでご確認ください。
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