歴史と復興の町―アソーレス諸島のアングラ・ド・エロイズモ

ポルトガル・アソーレス諸島のなかで最も歴史ある町アングラ・ド・エロイズモ。中世より交易上重要な役割を果たしたこの町は、20世紀末に大地震に見舞われます。しかしその後見事復興を遂げ、さらにかつての繁栄の面影を今に伝える建築・景観が評価され、世界遺産に認定されました。今回は、大西洋に浮かぶ小さな歴史都市アングラ・ド・エロイズモへのアクセス方法から町の見どころなどをご紹介します。

歴史と概要

アソーレス諸島はポルトガル本土から飛行機でおよそ2時間半、北大西洋上にある9つの島からなる火山諸島です。15世紀初頭にポルトガル人により発見され、ポルトガル領となりました。

このアソーレス諸島で3番目に大きい島である、テルセイラ島南西部の海に面する町アングラ・ド・エロイズモ(Angra do Heroísmo)は、大航海時代が始まった15世紀にできました。以来、ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸とを行き交う船の寄港地として重要な役割を果たします。

しかし、蒸気船の出現とともに町は次第に寄港地としての役割を失っていきます。さらに1980年、テルセイラ島は巨大な地震に見舞われてアングラ・ド・エロイズモの町も壊滅状態に。その後見事復興を遂げて歴史的な景観が再びよみがえり、地震から3年後の1983年には「アソーレス諸島のアングラ・ド・エロイズモの町の中心地区」として世界遺産に認定されました。

基本情報・アクセス

アソーレス島に訪れる際に気をつけたいのが、アソーレス島はポルトガル本土よりマイナス1時間の時差があることです。ポルトガル本土の時間で時計を合わせていた方は、アソーレスでは調整を忘れないでくださいね。

テルセイラ島へのアクセス
リスボン空港からテルセイラ島のラジェス空港までは直行便でおよそ2時間半。ポルトの空港からの直行便もあるほか、アメリカのボストン空港やイギリス、オランダからの直行便もあります。アソーレス島で一番大きなサン・ミゲル島のポンタ・デルガダ空港を経由した場合は4~6時間です。

空港からアングラ・ド・エロイズモの町までのアクセス
・タクシー:およそ20分
・バス:およそ50分(空港のバス停「Aeroporto」から05番系統に乗車し、「Praça Velha」で下車・1日2~3本・2.95€)
※島東部の「Praia da Vitória」で乗り換えていく方法もあります。
参考:EVT社ホームページ

アングラ・ド・エロイズモの見どころ

アングラ・ド・エロイズモはアソーレス諸島で最も歴史ある町です。近年まで交易の寄港地としての繁栄をしのばせる古い町並みを残していましたが、1980年の地震で大きな損傷を受けました。島のおよそ75%もの建物が損傷してしまったと言われています。

世界遺産にも認定された現在の町並みは、地震を乗り越え、かつての姿を見事によみがえらせた島民の努力の結果でもあります。広大な大西洋と島の大地の間にぎゅっと凝縮された市街地は、カラフルに彩られた小さな家や宗教施設が建ち並び、まるでおもちゃのようなかわいらしさ。おもな見どころを見ていきましょう。

大聖堂(Santíssimo Salvador da Sé)

アングラ・ド・エロイズモの町並みの中でもとりわけ目を引くのが白壁と黄色のフレームが眩しい大聖堂です。16世紀に建設が始まったこの建物は、アソーレス諸島内で最大の宗教的建造物と言われています。大地震で右の塔が倒壊し、さらに火事にも見舞われた教会ですが、立派な姿によみがえっています。

ミゼリコルディア教会(Igreja da Misericórdia)

港の近くにあるミゼリコルディア教会は18世紀の建築物です。もともとこの地には、アソーレスで最初の病院が建てられていました。ファザードを彩るパステルブルー色が町並みに美しく映える教会です。

ノッサ・セニョーラ・ダ・ギア教会(Igreja da Nossa Senhora da Guia)

サン・フランシスコ修道院に付属している教会で、アングラ・ド・エロイズモ博物館も併設。リスボンのジェロニモス修道院と同じ、マヌエル様式が採用されており、ポルトガルの大航海時代の繁栄のシンボルでもある貝殻や船などの装飾が数多く見られます。ヴァスコ・ダ・ガマの兄パウロ・ダ・ガマが埋葬されている教会としても有名です。

サン・ジョアン・バティスタ要塞(Fortaleza de São João Baptista)

寄港地としてさまざまな人・物資が行き交ったアングラ・ド・エロイズモは、海賊の襲撃への備えも必要でした。町西部にあるサン・ジョアン・バティスタ要塞は、4kmに渡る長さの壁と何百もの大砲を備えた、島の交易を守る砦でした。また、町の東部にはさらに歴史の古いサン・セバスチャン要塞もあり、こちらは現在ホテルとして活用されています。

ブラジルの丘(Monte Brasil)

サン・ジョアン・バティスタ要塞から南に広がるブラジルの丘は、テルセイラ島の火山活動によってできた半島です。のどかな景観の中を歩けるハイキングコースも整備されており、ピクニックにもってこいの自然空間です。

参考HP:テルセイラ島観光サイト「Explore TERCEIRA」

アクセスマップ

まとめ

中世の面影を残す町、アングラ・ド・エロイズモのご紹介でした。
アソーレス諸島には、アングラ・ド・エロイズモのほかにもピコ島のワイン畑の景観も世界遺産に認定をされています。ポルトガル本土から遠く離れた大西洋に浮かぶアソーレス諸島を訪れる際は、個性的な2箇所の世界遺産巡りもおすすめですよ。
※ピコ島のワイン畑の景観についてもっと詳しく!→「火山岩を活用した網目模様のブドウ畑!黒い大地ピコ島を巡る

※各施設・店舗の情報は2021年1月の情報です。今後変わる可能性がありますので、最新の情報は公式HPなどでご確認ください。

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