写真に納まりきらないほど大きな宮殿が、リスボン郊外の小さな町にあります。それが、マフラ国立宮殿。18世紀に建てられたこの巨大な宮殿と、その周りの自然豊かな庭園・公園を含む一帯がポルトガルの世界遺産に2019年に仲間入りしました。この記事では、リスボンから行ける日帰りスポットとして注目度上昇中の世界遺産の町マフラをご紹介します!
概要と歴史
リスボンの北東に位置するマフラは、ここ数年交通網の発展によりリスボンへのアクセスが容易になったことで急激に人口が増えている町でもあります。ピンク色の壁の小さな家が建ち並ぶかわいらしい町の中にズドンと現れる巨大な宮殿がマフラのメインスポット。
新石器時代からローマ帝国・イスラム時代とこの地での人々の活動の名残は見られるものの、歴史の舞台として存在感を増したのは18世紀の宮殿建設がきっかけです。植民地だったブラジルからの潤沢な富の流入のタイミングとも重なり、豪華絢爛な建物へと完成を遂げたのがマフラ国立宮殿。さらに宮殿の背面には広大な狩猟場が設けられ、宮殿は王族が狩猟を行った日に立ち寄った別荘地的な役割を果たしました。
小さな町に不釣り合いな大きさの宮殿は長年、ポルトガルの隠れた巨大建造物でしたが2019年にブラガのボン・ジェズス・ド・モンテとともに世界遺産に登録されたことで注目度上昇中。世界遺産の登録を記念したイベントが宮殿前の広場で催された際は、年末のカウントダウンイベントのような盛り上がりだったようです。
基本情報
リスボンからの新たな日帰り旅行先として注目を集めつつあるマフラ。あまり聞き慣れない町かもしれませんが、実はリスボンからのアクセスもしやすい気軽に行ける世界遺産スポットなのです。まずはマフラへのアクセス方法からチェックしましょう。
アクセス難易度
アクセス難易度:★☆☆
★☆☆…簡単!ポルトガル観光定番スポット
★★☆…やや難。大都市からちょっと足を伸ばして
★★★…奥地。電車やバスを乗り継いで
マフラへのアクセスは、乗るバスだけ間違えなければとっても簡単。ポルトガルの首都リスボンからバス1本で行くことができるうえ、巨大なマフラ国立宮殿の目の前がバスの停留所なのです。バスの本数も多く、マフラの停留所もこれ以上ないわかりやすさ。
今までシントラやオビドスがリスボンからの日帰り旅行の定番先でしたが、これからはマフラも候補のひとつですね!
マフラへのアクセス
マフラはリスボン首都圏に含まれる1都市です。マフラへのアクセスも、リスボンを起点としたものになります。
車で30分以内という交通の便のよさもあり、リスボンで働いたり学んだりする人のベッドタウン的要素のあるマフラは、リスボンとの間を結ぶバスも充実しています。しかし、学校や会社が休みの土日祝日はバスの本数が一気に絞られるので、その点だけ要注意。
リスボンからのアクセス
バス:リスボンのカンポ・グランデ(Campo Grande)バスターミナルからMafrense社のバスでエリセイラ(Ericeira)行き(200番・208番・209番・229番)に乗車し、途中のマフラ(Mafra)で下車。所要時間はおよそ40分~1時間で、乗る路線により時間は若干異なります。片道4.35€。本数は1時間に1~2本ほどですが、土日祝日は1~2時間に1本となります。
HP:Mafrenses社公式サイト
観光の所要時間
マフラの観光所要時間:半日
マフラ国立宮殿は、町のこぢんまりとした雰囲気と反する規模の建造物。もちろん内部もかなりの広さで、じっくり見て回るとあっという間に何時間も経ってしまいます。とはいえ、移動時間も短く効率的に観光ができるので、マフラ中心部の町散策も含めて半日あれば十分でしょう。そのままバスの終点であるエリセイラへ行って大西洋を眺めるのもよいですね。
なおマフラの世界遺産を構成するひとつである狩猟公園(タパダ)も訪れるのであれば行動エリアは一気に広くなります。日中いっぱいをマフラで過ごすプランがよいでしょう。
マフラ国立宮殿
ポルトガル国内のバロック様式の建造物の中でも最も象徴的な存在と言われるマフラ国立宮殿。王宮・バシリカ(礼拝堂)・修道院の3つが同じ建造物に集結している巨大な建造物です。
マフラ国立宮殿は、18世紀ポルトガル国王ジョアン5世が待望の子を授かったことを感謝し、子どもが健やかに育つことを祈って建設されました。しかし、その子どもは、宮殿建設が始まる前に2歳で亡くなってしまいます。
当初は小規模な礼拝堂と修道院を建設する予定だったものの、植民地であったブラジルからの大量の金による国内の繁栄もあり、当初の予定からはるかに規模を拡大した宮殿の建築へと方向転換を経て今の姿に。当初10数人が住む予定だった修道院は、最終的には300人以上もの修道士・修道女が住める規模にまで広がりました。
マフラ国立宮殿は1910年の王政廃止後より、美術館となり現在に至ります。
マフラ王宮
全部で1200もの部屋から構成されるマフラ王宮。バシリカ(礼拝堂)を中心として、王宮の北半分は国王のスペース、南半分は王女のスペースとして区分けされ、双方のスペースはヨーロッパで一番長い廊下とも言われる232mもの長い通路で結ばれています。
そのほか、狩猟公園での狩りで手に入れたシカやイノシシといった動物の角や毛皮などが部屋一面にデコレーションされた「トロフィールーム(Sala dos Troféus)」や、音楽やゲームを嗜む部屋など贅沢空間そのもの。
1910年ポルトガル王国最後の国王マヌエル2世がイギリスへの亡命前夜、最後のポルトガル王国での夜を明かしたのがこのマフラ王宮の南棟でした。現在もマヌエル2世が最後に使用したベッドが王宮内に展示されています。
バシリカ(礼拝堂)
マフラ国立宮殿の正面中央部分を占めるのが、バシリカ(礼拝堂)です。バシリカとは、カトリック教会において特別な権利を与えられた礼拝堂の事を指します。
巨大な聖人の彫像が並ぶ入口を進むと、ヴァチカンのサン・ピエトロ寺院を模したと言われるブルーグレーとピンク色が印象的な大理石の礼拝堂が広がります。直径13mのドームと6つのオルガン、そして高さ68mの二つの塔内部にある98の鐘からなる世界最大規模のカリヨンが見どころ。
修道院
マフラ王宮とバシリカの背面にあるのが修道院です。豪華絢爛な王族の住む王宮と、質素倹約な生活を善しとする修道院が共存しているということが、このマフラ王立宮殿の不思議な魅力のひとつでもあります。
大人数が一斉に座れる食堂、そしてキッチンや病床、回廊まで、王宮の絢爛豪華な空間とは異なる素朴な部屋が並ぶ修道院の内部。一時は300人もの修道士や修道女が暮らした様子が垣間見えることでしょう。
図書館
マフラ国立宮殿で見逃せないのが、修道院に併設されている大理石の床の図書館です。歴史ある書物を中心に、およそ3万6000冊ものコレクションが整然と並ぶ様子は圧巻。現在でも、予約制でおもに研究者や学生向けに図書館の利用は開放されています。
古いものだと15世紀の書物が保管されているこちらの図書館。歴史ある書物の劣化を防いでくれているのが、この図書館内に住み着いているコウモリです。夜、真っ暗になると彼らは書物の劣化の原因となる害虫を食べてくれるのだそう。
マフラ国立宮殿(Palácio Nacional de Mafra)
住所:Terreiro D. João, 2640-492 Mafra
営業時間:9:30~12:30(最終入場12:15)14:00~17:30(最終入場16:45)
休業日:火曜日・1/1・聖日曜日(イースターサンデー)・5/1・12/25
入場料: 6€
HP: マフラ国立宮殿
セルク庭園
マフラ国立宮殿の右手に入口があるのが、バロック様式のセルク庭園。パリのヴェルサイユ宮殿を模して設計されたと言われています。幾何学模様の庭園に、39種類もの薬草やハーブが栽培されているアロマガーデンのほか、噴水、遊歩道、水車から構成されるマフラの憩いの場です。毎年夏に開催されるマフラのパン祭りでは、イベント会場になります。
セルク庭園(Jardim do Cerco)
住所:Largo General Humberto Delgado, 2640-492 Mafra
営業時間:9:00~17:00(10月~3月)9:00~19:00(4月~9月)
入場料: 無料
HP: セルク庭園
狩猟公園(タパダ)
マフラ国立宮殿の背面には、東京ディズニーランドおよそ16個分の広大な面積を誇る国立公園があります。公園の周囲21kmには城壁が築かれ、内部は野生動物の生息地となっています。
公園内は、複数種類あるチケットで入場することができます。公園内を徒歩で散策する場合は徒歩ツアーチケットで入場します。園内には全部で3つの散策路が整備されており、4.5kmの初心者コースから8kmの本格コースまで、難易度や所用時間別に好きなコースを選べます。そのほかにも、サイクリングチケット(自転車のレンタルも可能)やガイドツアー、馬車で巡るチケットなどさまざまなアクティビティが用意されています。
季節によって中止されているアクティビティもあり、またチケットの種類によっては事前のネット予約が必要な場合がありますので、ダパダ公園を訪れる際は事前に公式HPをチェックしてくださいね。多くの野生の動植物が生息する広大な公園に、ポルトガルの大都市圏の一部にいることを忘れてしまうことでしょう。
狩猟公園(タパダ)(Tapada Nacional de Mafra)
住所:Portão do Codeçal, 2640-602 Mafra
アクセス:マフラ国立宮殿から224番Pêro Negro行きのバスに乗車・2停留所目のTapada de Mafraで下車
営業時間:9:30~18:30
入場料: 4€(徒歩散策)・15€(レンタサイクル・3時間半)
HP:狩猟公園(タパダ)公式サイト
マフラおすすめのグルメ
ポルトガルは、地域によってバリエーション豊かなパンが楽しめる国。マフラにも、そのまま町の名前をパンにした「マフラパン」という種類のパンがあります。
その特徴は、外はカリっと、中はソフトでモチモチ、小麦の甘みが感じられる味わい。この地域のレストランで席に座ると、まずこのマフラパンがサーブされることが多いです。バターを塗って小麦色にトーストされたパンが食卓に置かれると、メインの料理がやってくるまえにパンだけ一気に間食してしまいそうなくらいの美味しさ。
毎年7月には、宮殿隣のセルク公園で「パン祭り」なるイベントも催されます。マフラパンはもちろん、地域の特産品や工芸品、屋台から大道芸まで大盛り上がり。マフラ中の人が集うのではないかというようなにぎわいを見せるイベントです。
※マフラパンを含むポルトガルのパンについて、以下の記事で詳しく解説しています!
「ポルトガルのパンっておいしいの?おすすめパン8選」
スポットマップ
まとめ
2018年の夏に私がマフラを訪れた際は、観光客もまばらで、ガラガラの部屋がずっと続いてその広大さだけが際立っていたマフラ国立宮殿。そんなマフラ国立宮殿を中心とするエリア一帯も、これからはその存在感に匹敵する観光客が訪れることでしょう。
リスボンを拠点に、ふらっと行ける日帰り旅行はどこがいいだろう?そんな思いを巡らすあなたには、今はマフラが熱い!とおすすめします。
※各施設・店舗の情報は2020年9月の情報です。今後変わる可能性がありますので、最新の情報は公式HPなどでご確認ください。
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