「祈りの町」とも呼ばれるブラガ。80を超える教会や、ポルトガルで一番古い大聖堂があるブラガは、宗教都市としての姿を今も残します。そのブラガの町を見守るボン・ジェズス・ド・モンテ聖域が、世界遺産に認定されたのはつい最近の2019年のこと。
この記事では、世界遺産なりたてホヤホヤのボン・ジェズス・ド・モンテ聖域の見どころと行き方、そしてブラガ旧市内のおすすめポイントをご紹介します。
ブラガの概要と歴史
ポルトガル北部・ミーニョ地方の中心都市ブラガは、古代からの歴史をもつ古都でもあります。
古代ローマ帝国時代、アウグゥストゥス帝によりブラカラ・アウグスタ(Bracara Augusta)と呼ばれる都市がこの地に建設され、ローマ帝国の隆盛とともにこの都市も繁栄を誇りました。その後、ローマ帝国の衰退とともに中欧からやってきたスエヴィ族がブラガの地を首都とした王国を建設するも、すぐに西ゴート族やムーア人の支配下になります。
12世紀のポルトガル王国誕生後は王国を代表する宗教都市のひとつとして、大聖堂の建設など信仰の地としての性格をさらに強めていきました。
ブラガ郊外のエスピーニョ山の山頂にある「ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域」は18~19世紀につくられた巡礼者のための聖地(サクラ・モンテ=聖なる山)です。
2019年には教会を中心とする聖域一帯が世界遺産に認定されました。2020年現在でポルトガルでもっとも新しい世界遺産スポットでもあり、600段近くある階段の印象的なビジュアルも相まって人気を集める注目のスポットです。
基本情報
世界遺産のボン・ジェズス・ド・モンテ聖域は、ブラガの町からおよそ5km離れた山の上にあります。ブラガ駅、またはブラガの中心地からバスで向かうのが一般的。まずはブラガへの行き方、そして市内からボン・ジェズス・ド・モンテ聖域までのアクセス方法をチェックしましょう。
アクセス
アクセス難易度:★★☆
★☆☆…簡単!ポルトガル観光定番スポット
★★☆…やや難。大都市からちょっと足を伸ばして
★★★…奥地。電車やバスを乗り継いで
ブラガへのアクセスは、鉄道・バス共に本数も多くアクセス容易なので星ひとつレベル。しかし、世界遺産のボン・ジェズス・ド・モンテ聖域まで行くとなると市内から路線バスに乗って、さらに郊外へ進む必要があります。
とはいえ、路線は1本に限られていて運行本数も多いので難易度は低めです。スムーズなブラガ観光のためにも、乗り降りする停留所や路線は押さえておきたいポイント。
ブラガへのアクセス
ポルトからのアクセス
ポルトの北東部に位置するブラガは、ポルトからの日帰り旅行先としても人気の町です。交通の便も良く、同じミーニョ地方のポルトガル発祥の地「ギマランイス」や、ポルトガルの幸福のモチーフである雄鶏ガロの伝説が生まれた町「バルセロス」などの町とセットで回るのもおすすめ。
ギマランイスについてもっと詳しく!→「ここにポルトガル始まる!世界遺産のギマランイス歴史地区」
バルセロスについてもっと詳しく!→「ポルトガルのシンボル&愛されマスコット「ガロ」のあれこれ」
・鉄道:ポルトのサン・ベント(São Bento)駅からブラガ(Braga)駅までおよそ1時間~1時間10分(都市近郊線Urbano)。またはポルトのカンパニャン(Campanhã)駅からブラガ(Braga)駅までおよそ40分(高速鉄道AP)。1日計30便ほど
・バス:ポルトのバスターミナル(Campo 24 de Agosto)からブラガのバスターミナルまでおよそ1時間(rede expressos社またはciti express社利用)。1日24便ほど
ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域へのアクセス
ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域へはブラガ市内を走るTub社のバスに乗って向かいます。
ブラガ駅前ロータリーのバス停(Rotunda Estação I)、またはブラガ市内リベルダーデ通り沿いのバス停(Liberdade (25 de Abril))から、2番(Bom Jesus行き)のバスに乗りましょう。中心部よりおよそ20分、片道1.65€で乗車時に運転手に運賃を渡します。
復路も同様に2番のバスに乗車しますが、停留所が行きと一部異なります。そのまま中心部の観光を続けるのであれば、レプブリカ広場沿いのバス停(Central II)で下車するとよいでしょう。
HP:Tub社公式サイト
観光の所要時間
ブラガの観光所要時間(目安):半日~1日
ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域のみであれば半日あれば十分ですが、ブラガの中心地に広がる大小さまざまな教会や、色鮮やかな庭園なども見逃せません。1日いても見きれないほどの歴史的建造物が町の至る所にあるブラガでは、1日かけてゆっくり、その神聖な雰囲気の中に身を置くのもよいですね。
ブラガのボン・ジェズス・ド・モンテ聖域
ブラガ郊外、エスピーニョ山の山頂にあるブラガのボン・ジェズス・ド・モンテ聖域。重厚感のあるボン・ジェズス教会を中心とする600段近くもある階段、美しい庭園、洞窟や池などの一帯が「聖域」として世界遺産に認定されています。
ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域は、もともとはカトリック教徒の信仰のためにつくられた「巡礼の地」でした。山頂の教会に向かう途中の階段には、イエス・キリストの受難の場面をリアルに再現した礼拝堂がいくつも建っています。
573段の階段
ブラガからのバスを降りたところにあるアーチをくぐると、さっそく山頂に向かっての階段が始まります。階段は全部で3部構成。最初に始まるのが、376段の「入口の階段」(Escadório do Pórtico)。緑に包まれた階段の途中や折り返し地点には、キリストの受難を再現した小さな礼拝堂や噴水が点々と建っています。
続く階段が、104段の「五感の階段」(Escadório dos 5 sentidos)。この階段を登り始める前に、下から見上げた白いジグザグ階段の光景はボン・ジェズス・ド・モンテ聖域観光には見逃せないベストスポットです。
「五感の階段」には、踊り場ごとにある泉の彫像がそれぞれ五感を示しています。彫像の目から水が湧き出る泉=視覚、というように、下から順番に視覚・聴覚(耳から水が湧き出る)・嗅覚(鼻から水が湧き出る)・味覚(口から水が湧き出る)・触角(両手で水差しを握る)を表しています。
頂上まであと一息、最後の階段が、「三徳の階段」(Escadório das Virtudes)です。93段の階段にも3つの泉があり、それぞれ信仰・希望・慈愛を表しています。
ボン・ジェズス教会
ブラガ出身の建築家、カルロス・アマランテが設計したボン・ジェズス教会は573段の階段を登った先にずしっと構える重厚感ある外観の教会です。ブラガの町を見守るように佇むその姿は、「信仰の地」ブラガにふさわしい圧倒的な存在感。完成は19世紀と比較的新しい教会。内部はパステル調の可愛らしい色合いで、洗練された雰囲気の空間です。正面の祭壇には、数々の受難を経たイエス・キリストが昇天する様子が再現されています。
モーゼス広場と教会周りの自然
ボン・ジェズス教会の目の前に広がるのは、「モーゼス広場」。綺麗に手入れのされた花壇の色鮮やかな花々と、周りを包む緑の木々、教会や階段の白壁のコントラストが美しい景観は、ポルトガル国内の庭園でもトップレベルだと評判です。
また、階段から教会を見上げた背後には、緑豊かな森や洞窟、池があります。洞窟や橋など人工で造られたものも、自然と調和している洗練された空間が広がります。地上から何百段も登った先に広がる庭園と自然は、はるばるこの場所までたどり着いた人だけが目にすることのできる楽園ですね。
世界最古の水力ケーブルカー
ブラガの市内から距離がある上に、500段以上もの階段…!とハードルが高そうに見えるボン・ジェズス・ド・モンテ聖域ですが、階段の代わりにケーブルカーを使用する手もあります。
階段の脇を一直線に昇り降りするこのケーブルカーは、水力で稼動する世界最古のケーブルカーで、19世紀末から運行しています。窓のないレトロなケーブルカーに乗って、風を感じながら森の中をぐんぐんと進んでゆくのも気持ちがよいですよ。
営業時間: 8:55~19:55(夏季)8:55~12:55/13:55~17:55(冬季)
入場料: 片道1.5€ 往復2.5€
ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域(Santuário do Bom Jesus do Monte)
住所:Monte do Bom Jesus 4715-056 Tenões
営業時間: 8:00~19:00(夏季)8:00~18:00(冬季)
休館日:なし
入場料: 無料
HP: ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域
ブラガ市内の見どころ
ブラガの中心地は、鉄道のブラガ駅から北東方面にゆるやかな坂を登った先のおよそ500m、旧市街のメインゲートである「アルコ・ダ・ポルタ・ノヴァ」をくぐった先から始まります。このゲートから、ソウト通りを進んだ先にあるメイン広場のレプブリカ広場までの左右一帯に、教会や歴史的建造物が密集して建っています。
旧市街で見逃せないのが、カテドラル(ブラガ大聖堂)です。
国民の90%以上がカトリック教徒のポルトガルは、国内の至る所に教会があります。そのポルトガル国内でも、最古の大聖堂がこのブラガにあるカテドラル。12世紀に建設されたこの大聖堂では、豪華絢爛な装飾とパイプオルガンに目を奪われるカテドラル内部に注目です。
カテドラル(Catedral de Braga)
住所:Rua D. Paio Mendes, 4700-424 Braga
営業時間
ツアー:9:30~12:30/14:30~17:30(夏季は18:30まで)
大聖堂:8:00~18:30(10月~3月) 8:00~19:00(4月~9月)
入場料: 大聖堂2€/礼拝堂2€/宝物館3€
HP:カテドラル(ブラガ大聖堂)
カテドラルの東にあるのはサンタ・クルス教会。さまざまなイメージの彫刻が施されているこの教会のファサードには、3羽の雄鶏が隠されています。そして、この3羽の雄鶏をすべて見つけられた女性は、まもなく結婚できると言われているのです。2羽の雄鶏はすぐに見つけられるものの、3羽目の雄鶏を見つけるのは至難の業。そもそも、本当に存在するのかどうかも定かでないとの説もあります。
実はボン・ジェズス・ド・モンテ聖域にも、ある彫刻の周りを3周まわると結婚できる、と言い伝えられているスポットがあります。古くから信仰心にあふれたブラガの町は、伝説が生まれやすい町だったようですね。
現在は公共図書館として利用されている、旧大司教館。その周りを彩るカラフルなサンタ・バーバラ庭園もブラガ旧市街の見どころです。石造りの武骨な印象の建物が多いブラガの町並みの中に、鮮やかに映える花々の美しさが印象的ですね。
ブラガのおすすめ情報【フリーウォーキングツアー】
厳かな雰囲気のブラガの町は歩いて気ままに回るのももちろん楽しいですが、何せ教会がたくさんあってあっちもこっちも、と迷ってしまうかもしれません。
そんなあなたにおすすめしたいのが、「ミーニョ・フリーフォーキングツアー」(Minho Free Walking Tour)。毎日10:00、11:00、15:00の時刻に、旧市街のメインゲート「アルコ・ダ・ポルタ・ノヴァ」に緑の傘をさしたガイドが現れます。予約不要で参加可能、およそ2時間かけて旧市街を中心とするブラガの町の見どころを解説付きで回ってくれます。
言語は基本的には英語またはポルトガル語(状況に応じてスペイン語、フランス語)で、その日の参加者の顔ぶれで決まります。参加は無料、ツアーの最後に満足度に応じてチップを渡します。
ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域のガイドツアーもありますが、こちらは予約制です。
参考HP:Minho Free Walking Tour
ブラガのおすすめグルメ
最後に、上で紹介したフリーフォーキングツアーに参加した際にガイドに連れて行ってもらったブラガおすすめのグルメ情報です。
ソウト通りから1本道を入ったところにある「フリジデイラス・ド・カンティーニョ(Frigideiras do Cantinho)」、18世紀末創業という老舗カフェレストランです。近年、建物の改装工事中には敷地内に古代ローマ帝国時代の遺跡が見つかり、現在でも店舗の床の一部が透明になっていて床下の遺跡を見下ろすことがきます。
イートイン、テイクアウトともに可能なこのお店の名物は、店名にもなっている「フリジデイラ(Frigideira)」。直訳するとフライパンという意味をもつこの商品は、名前の通り人の顔ほどのサイズのある大きな円盤型のミートパイです。見た目は大きいですが、ふわっ、さくっとした食感のパイ生地に、ぺろりと平らげてしまえることでしょう。
店内での食事はもちろん、テイクアウトにすると丁寧にお店の模造紙で包み、紐で結んでくれる温かみのあるお店です。
フリジデイラス・ド・カンティーニョ(Frigideiras do Cantinho)
住所: Largo São João Souto1, 4700-326 Braga
営業時間:8:00~22:00
HP:フリジデイラス・ド・カンティーニョ
また、町の名前がメニュー名になっている「バカリャウ・ア・ブラガ(Bacalhau à Braga)ももちろんブラガで押さえておきたい代表メニューです。ポルトガルでもっとも食べられる魚のひとつ、干し鱈(バカリャウ)を使ったこの料理は、弾力と旨味を存分に味わえる逸品。下の記事でも、このメニューを紹介していますのでぜひ見てみてくださいね。
「旨みたっぷり!ポルトガルで堪能したい魚介料理を一挙公開!」
スポットマップ
まとめ
ポルトガルで一番新しい世界遺産、ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域のご紹介でした。ブラガは旧市街だけでも教会や歴史的建造物の多い見どころ満載の町。思わず旧市街だけで満足!となってしまいがちですが、ここはもう少し足を伸ばして、ここ1、2年でさらに注目度を上げている世界遺産スポットにも訪れてみてくださいね。
※各施設・店舗の情報は2020年9月の情報です。今後変わる可能性がありますので、最新の情報は公式HPなどでご確認ください。
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