ワイン好きのあなたに!ポルトガルワインを味わうための基礎知識

ポルトガルは世界でもトップクラスのワイン大国。国の至る所でワインがつくられ、スーパーにはたくさんの安旨ワインが売られています。地元の人が通う食堂では、ワインと水がほとんど同じ値段で提供されていることも。そんな、ワイン好きも注目のポルトガルのワイン事情。今回は、ポルトガルワインをもっと楽しむための、基礎知識をご紹介します!

ポルトガルはワイン大国!

2018年、世界でもっとも一人当たりのワイン消費量が多い国はポルトガルであると発表がされました。(OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)による)フランスやイタリアなど、ワインのイメージが定着している国よりもポルトガルの方がワインの消費量が多いのは意外に感じるかもしれませんね。

ですが、実際にポルトガルに行き、レストランやスーパーでワインの種類の豊富さとリーズナブルな価格、そして昼夜問わずワインを片手に語り合う人々の様子を目にすると、ワイン消費大国の肩書きにも納得するはず。ポルトガル料理とも相性抜群のポルトガルワインは、人々の食生活に欠かせない存在なのです。

ポルトガルは、年間で1人62リットル(およそ83本分)のワインを消費しています。一方の日本は1人当たり3.2リットル(およそ4本)。日本でもワインのあるシーンが多く見られるようになりましたが、まだまだその差は歴然ですね。

消費量の多さだけではなく、日本の4分の1ほどの国土にも関わらず生産量も世界トップレベルを誇ります。海沿い・内陸の国の至る所でワインづくりが行われており、250種を超すポルトガル固有のブドウ品種を複数ブレンドしたワインが一般的です。

聞き慣れない固有品種ばかりのポルトガルワイン。初めての方にはとっつきにくさを感じてしまうかもしれませんが、一度その美味しさを知るとどんどんポルトガルワインの魅力に取りつかれてしまうはずですよ。

ポルトガルワインの歴史

ポルトガルのワインづくりの起源は、およそ4000年前まで遡ります。イベリア半島におけるイスラム統治時代にそれまで続いていたワインづくりは一時中断しますが、レコンキスタ(国土回復運動)によりワインづくりが再開。ポルトガル王国が発見の旅を推し進めた大航海時代には、ポルトガル人が上陸をしたマデイラ島やアソーレス島でもワインづくりを始めます。そして、長く過酷な航海はマデイラワインという酒精強化ワインをも生み出しました。

日本が初めて出会ったワインも、ポルトガル人がもたらしたものでした。戦国時代、日本に持ち込まれた赤ワインは、織田信長らの戦国武将たちも味わったと言われています。ポルトガルで赤を表す「tinto(ティント)」の名から、しばらくは「珍陀(チンタ)酒」の名で親しまれました。

17世紀には酒精強化ワインのポートワインが主にイギリス輸出用に量産されます。このとき、インチキ商品も出回りポートワインのブランド性の低下を危惧した時の宰相ポンバルは、世界初の「原産地呼称法」を制定。決められた土地、決められた製法でつくられたワインのみが「ポートワイン」を名乗れるようになりました。これは、現在ではフランスやイタリアなどでも一般的な原産地呼称制度の先駆け的な法律でした。

ポルトガルワインにおける固有品種の多さは、20世紀半ばのサラザールによる独裁時代がひとつの要因として挙げられます。保守主義・ナショナリズムを提唱したサラザールの独裁政治は、結果としてポルトガルの発展にストップをかけるものでした。ワイン生産に関しても同じで、世界的にメジャーなブドウ品種をとり入れることも、ポルトガルワインを外の国に向けて売り出す機会もほとんどなかったため、ポルトガルのワイン製造者たちは長い間同じ方法で、国内の人々の為にワインをつくり続けていました。

そんなポルトガルワインの転換期となったのは、1986年のポルトガルのEC加盟です。これをきっかけに、ポルトガルワインの見直しと海外進出に向けた戦略が考えられることとなりました。それまでブレンドが中心だったポルトガルワインに、単一品種でつくられたワインがつくられ始めたのもこの頃です。近年では、ワインのクオリティー向上のため、ポルトガル国外のワイン生産地で研修や勉強をする若者が増えています。

今や国の重要産業品でもある、ポルトガルワイン。日本への輸入量もここ10年間でおよそ4倍と右肩上がりに伸びており、レストランや小売店で目にする機会も多くなりました。

ポルトガルワインの主な産地

ポルトガルワインは国土の東西南北で作られています。気候も土壌も異なる地でつくられるワインのバリエーションの豊富さもポルトガルワインの魅力。ここからは、主な産地の特徴を見ていきましょう。

ヴィーニョ・ヴェルデ(Vinhos Verdes)

ポルトガル北西部にある一大ワイン産地ヴィーニョ・ヴェルデ。大西洋からの海風の影響を大きく受けるこの地域でつくられる、完熟前のブドウを用いたフレッシュなワインが、ヴィーニョ・ヴェルデです。

直訳して「緑のワイン」とも呼ばれるこのワインの多くが、微発泡性の白ワインのようなさわやかな飲み口でアルコール度もやや控えめです。夏のカラッとした青空の下で飲むシュワシュワのヴィーニョ・ヴェルデはたまらない清涼感。近年は発泡しない熟成向けのヴィーニョ・ヴェルデもつくられています。

また、少し珍しいのが、赤のヴィーニョ・ヴェルデ。お茶碗のような白いボウルカップに入れて飲むのが本場流で、しばしば炭火焼きのイワシと共に飲まれます。

【ワインの特徴と主な品種】
(白)麦わら色・フルーティーなアロマ・みずみずしく軽やかな味わい。和食との相性も◎。
主な品種:アルバリーニョ、ロウレイロ、アザル、トラジャドゥーラ、アヴェッソ
(赤)ルビー色・果実味とキリリとした酸味・軽くフレッシュな飲み口。
主な品種:ヴィニャオン
(ロゼ)華やかなピンク色・赤いベリーのアロマ・爽やかな酸。
主な品種:ヴィニャオン、アザル、エスパデイロ

ポート・ドウロ(Porto e Douro)

ポルトガル北東部のドウロでつくられるワインで有名なのが、酒精強化ワインの「ポートワイン」です。ドウロで栽培・醸造されたポートワインが、ドウロ川下流のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアで熟成され、国内外の各地へと出荷されます。世界で初めて、ワインの原産地呼称法が設けられたのもこの生産地でした。ブドウの段々畑が続くアルト・ドウロ地区の景観は世界遺産にも認定をされています。
アルト・ドウロ地区についてもっと詳しく!→「ポートワインはここで生まれる!アルト・ドウロ・ワイン生産地域

ポートワインには大きく分けて「ルビー」「トゥニー」「ホワイト」「ロゼ」の4種類があり、ルビーポートとトゥニーポートは主に食後のデザートワインとして、ホワイトポートやロゼポートは食前酒やカクテルにして食中酒としても楽しまれています。

また、ドウロではポートワインだけではなく、白ワイン、赤ワイン、さらにはデザートワインのモスカテルもつくられています。

【ワインの特徴と主な品種】
(白)柑橘系のアロマ・フレッシュな飲み口とほのかなビター感。
主なぶどう品種:マルヴァジア・フィナ、ゴウヴェイロ、ラビガト
(赤)凝縮感のある果実味・滑らかで力強い味わい。長期熟成向けのワインも多数。
主なぶどう品種:トゥーリガ・ナショナル、トゥーリガ・フランカ、ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカ、ティント・カォン

バイラーダ(Bairrada)

コインブラやアヴェイロなどのあるポルトガル中部のバイラーダは、赤ワインが生産量の8割以上を占めています。この地域の伝統的な土着品種「バガ」を主体とした赤ワインが特に有名。また、スパークリングワインの生産も盛んで、ポルトガルでつくられるスパークリングワインのおよそ6割がバイラーダ産です。

【ワインの特徴と主な品種】
(白)フルーティーなアロマ・フレッシュな味わいとエレガントな余韻。
主なぶどう品種:マリア・ゴメス(フェルナォン・ピレス)、ビカル
(赤)しっかりとしたタンニン感と酸のバランス・リッチで複雑味のあるアロマ。熟成向け。
主なぶどう品種:バガ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロー、トゥーリガ・ナショナル

ダォン(Dão)

名前が似ていることで作家の檀一雄お気に入りのワインとしても知られるダォンのワイン。周囲を山に囲まれた、標高の高いこの地域ではワイン生産量のおよそ8割を赤ワインが占めています。ポルトガルを代表する品種トゥーリガ・ナショナルの原産地としても知られ、良質なワインを生み出す銘醸地としての評価が高い地域です。

【ワインの特徴と主な品種】
(白)豊かなアロマ・ミネラル感・果実味と酸味のバランスのとれたワイン。
主なぶどう品種:エンクルザード、ビカル、セルシアル、マルヴァジア・フィナ、ヴェルデ―リョ
(赤)凝縮したアロマ・しっかりとしたボディ・エレガントな飲み心地。
主なぶどう品種:トゥーリガ・ナショナル、アルフォシェイロ、ジャエン、ティンタ・ロリス

セトゥーバル(Península de Setúbal)

リスボンの南に位置するセトゥーバルは、赤ワインや白ワインに加えて、マスカットからつくられるデザートワインの「モスカテル・デ・セトゥーバル」の産地としても有名です。マスカット由来の果実味に、ドライフルーツやはちみつのようなニュアンスが加わった複雑な味わいが特徴。

【ワインの特徴と主な品種】
(白)フローラルなアロマ・フレッシュな酸。
主なぶどう品種:モスカテル、アリント、フェルナォン・ピレス
(赤)果実味と野性味・滑らかな味わい。
主なぶどう品種:カステラン、トゥ―リガ・ナショナル、トリンカデイラ

アレンテージョ(Alentejo)

ポルトガル国土のおよそ3分の1を占める南部のアレンテージョ地方では、オリーブやコルクに加えてワインも名産品。先進的な醸造技術を取り入れるなど、ここ数年で飛躍的に生産量が伸びている勢いのある産地でもあります。暑い夏、寒い冬を耐え忍ぶ大地の力強さを表すかのような重厚感のある赤ワインが特徴です。

【ワインの特徴と主な品種】
(白)滑らかでトロピカルフルーツを思わせるアロマ・ひかえめな酸。
主なぶどう品種:ロウレイロ、アンタォン・ヴァズ、アリント
(赤)赤い果実のアロマ・凝縮されたタンニン感・しっかりとした味わい。
主なぶどう品種:トリンカデイラ、アラゴネス、カステラン、アリカンテ・ブ―シェ

マデイラ(Madeira)

酒精強化ワイン「マデイラワイン」がつくられているのが、ポルトガルの離島・マデイラ島です。大航海時代、アメリカ大陸までの長い航海の過程で高温下にさらされたワインが、意外にも芳醇で独特な風味になっていたことがマデイラワインの始まり。発酵途中にはブランデーが添加されており、アルコール度数も17~22度と高めです。辛口から甘口まで、4タイプのマデイラワインがあります。

【マデイラワインのおもなブドウ品種】
セルシアル(辛口)、ヴェルデーリョ(中辛口)、ボアル(中甘口)、マルヴァジア(甘口)

ポルトガルワインを楽しむためのキーワード

ポルトガルワインのボトルやレストランのメニューでよく登場する、ワインにまつわる単語です。お気に入りのワインを選ぶときの参考にしてくださいね。

Vinho tinto赤ワイン
Vinho branco白ワイン
Vinho verdeヴィーニョ・ヴェルデ(緑ワイン)
Espumanteスパークリングワイン
Frisante微発泡ワイン
Roséロゼワイン
Vinho de casaハウスワイン
Vinho a copoグラスワイン
Vinho a jarroデキャンタワイン
Meia garrafaハーフボトル
Doce甘口
Seco辛口
Meio seco中辛
Lágrima極甘
Leveライトボディ
Encorpadoフルボディ
Uvaブドウ
Região地域
D.O.C.原産地呼称統制ワイン
I.P.R.産地表示上質ワイン
Vinho Regional生産地域表示ワイン

ポルトガルワイン好きはここに行くべき!

ポルトガルワインに魅了されてしまったら、次はその生産の本場まで足を運びたくなりますよね。ポルトガル国内のワイナリーの規模は大小さまざま。ある程度大きなワイナリーでは、ワイナリー見学や試飲ルーム、さらにはホテルが併設されたところなどもあります。

観光地としてもメジャーで行きやすいのは、ポルトの対岸の町「ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア」でしょう。町の目の前を流れるドウロ川の上流にあるドウロ地区でつくられたポートワインが熟成されているのがこの町です。川沿いには何件ものワイナリーが建ち並び、ワイナリー見学、ワインショップやテイスティングルームなど観光客向けの施設やサービスも用意されています。

また、マデイラ島に行った際はマデイラワインのワイナリー見学も押さえたいポイント。首都のフンシャルの町中にあるブランデーズ(BLANDY’S)は、アクセスもしやすい場所にあるので便利です。

ワイナリー見学は時期によっては混むこともあるので、見学したい日時や言語などをあらかじめチェックして予約をしておくと安心です。

まとめ

今ではポルトガルに行かずとも、ポルトガル料理のレストランやポルトガルワイン専門の通販サイトなど、日本でポルトガルワインを味わえる機会も増えました。個性豊かなポルトガルワインのなかから、ぜひお気に入りをたくさん見つけてくださいね。

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