ポルトガルで語り継がれる悲恋物語の主役が眠るアルコバサ修道院

ポルトガル版ロミオとジュリエットとも言われる、ペドロとイネスの悲恋物語。中世に繰り広げられた物語の主役2人が静かに眠るのが、世界遺産にも認定をされているアルコバサ修道院です。この記事では、アルコバサ修道院の見どころに加えて、ペドロとイネスのストーリーもご紹介します!

概要と歴史

リスボンからおよそ北に100kmのところにある、小さく静かな町「アルコバサ」。町を流れるアルコア川とバサ川に由来する町の名前は、ポルトガル版ロミオとジュリエットとも言われる悲しい恋の物語の主役2人が眠る教会と、歴史ある修道院がある所として知られています。

1179年に建設が開始されたアルコバサ修道院は、ポルトガル王国初代国王のアフォンソ1世により建設が開始されました。アフォンソ1世はこの修道院を、当時影響力を増していたシトー派修道会へ寄進します。その背景には、建国したばかりのポルトガル王国をヨーロッパの一国として、地位を向上させる目的がありました。

完成した建物は、シトー派の理念に則った「質素・倹約」が体現されたものとなりました。労働や学習を重んじる修道士たちの生活が垣間見える空間は、1989年に世界遺産に認定をされています。900年近くの歴史があるとても古い建築物ですが、大きな損傷が少なく、とくにバラ窓とファザードの一部は建築当初のものが今に残るとして非常に高い価値を誇っています。

ペドロとイネスの物語

アルコバサ修道院を訪れるのであれば、ポルトガルに伝わる悲恋物語はぜひ押さえておきたいポイント。物語は、ポルトガル国王ペドロ1世とイネスの悲しい恋物語として語り継がれています。

14世紀、時の国王アフォンソ4世は隣国カステーリャ王国との関係強化のために、息子のドン・ペドロをカステーリャ王の血縁にあたるコンスタンサと政略結婚させました。しかし、ドン・ペドロは妻のコンスタンサではなく、その侍女であるイネスに惹かれてしまいます。

国王の反対を受けながらもペドロとイネスの恋仲は続くなか、妻のコンスタンサが病気により若くしてこの世を去ってしまいます。その後、ペドロはイネスを側室とし、3人の子どもも儲けました。このことを快く思わなかったアフォンソ4世やポルトガル王国の貴族たちは、イネスの暗殺を企て、ついにコインブラの「涙の泉」でイネスは3人の刺客により暗殺されます。

イネスが暗殺された2年後、アフォンソ4世が死去し、ドン・ペドロがペドロ1世として国王に即位しました。ペドロ1世は、即位後まもなくイネス暗殺の復讐を始めます。イネスを殺害した3人の刺客を処刑、イネスの墓を掘り出して彼女を正式な王妃として認める儀式を執り行ったのです。

今も語り継がれる物語の主役ペドロとイネスの2人は現在、アルコバサにある教会で一緒に眠っています。

基本情報

アルコバサはリスボンとコインブラのちょうど間にある町です。バスで20分の位置には美しい海岸線と大波で有名な町ナザレもあるので、アルコバサとセットで周遊するのもおすすめ。まずはアルコバサへのアクセス方法や観光の所要時間をチェックしましょう。

アクセス(難易度つき)

アクセス難易度:★★☆
 ★☆☆…簡単!ポルトガル観光定番スポット
 ★★☆…やや難。大都市からちょっと足を伸ばして
 ★★★…奥地。電車やバスを乗り継いで

リスボン、コインブラなどの主要都市から直通のバスが運行しているものの、本数は多くはありません。バスでの移動をするのであれば、運行スケジュールに沿った行程にしておくと効率よく動けるでしょう。

アルコバサまでのアクセス方法 

リスボンからのアクセス
バス:リスボンのセッテ・リオス(Sete Rios)ターミナルからアルコバサのバスターミナルまでおよそ1時間40分~2時間(Rede Expressos社の高速バス利用・1日4~6便ほど)

観光の所要時間

アルコバサの観光の所要時間:半日

アルコバサの町自体はとても小さく、アルコバサ修道院を見学するのみであれば半日あれば十分ゆっくり見て回れるでしょう。まだ少し時間があるのであれば、アルコバサの町を見下ろす丘にある城壁跡まで登るのもおすすめ。大きなアルコバサ修道院の全景が見渡せる、隠れた絶景スポットです。

もう少し時間に余裕があるようなら、アルコバサ修道院の北方面、アルコア川とバサ川が合流する場所にある「ジャルディン・ド・アモール(愛の庭園)」へ。園内にはハートのモチーフのオブジェやペドロとイネスを表す彫刻があったり、ハート型の南京錠が売っていたりと、「アモール=愛」にあふれた空間です。

アルコバサ修道院の見どころ

およそ220mのファザードを持つアルコバサ修道院は、ポルトガルで最初のゴシック様式の建築物とも言われています。教会・修道院の順に中を巡りましょう。

アルコバサ修道院を巡ろう!

教会

高い天井まで伸びている幾重もの白い柱が美しい教会は、シトー派の性格がもっとも顕著に表れている空間のひとつです。ポルトガル国内に数多く存在する教会の多くに見られる豪華絢爛な装飾空間とは対照的な、繊細で落ち着きのある空間が広がります。

この教会の祭壇の翼廊部分に、アルコバサ修道院のハイライトでもあるペドロ王とイネスの墓が置かれています。14世紀にペドロ王の命で作られたこの2つの墓は、ペドロ王とイネスの墓が、お互いの足を向けた状態で左右対称に置かれています。これは、最後の審判が下されて目を覚ましたときに、お互いが最初に相手の姿を目にすることができるように、との思いが込められていると伝えられます。

王の広間

修道院を見学するためには、教会の入口近くのカウンターでチケットを購入しましょう。

最初の部屋である「王の広間」には、初代国王アフォンソ1世からリスボン大地震発生時の国王ジョゼ1世までの歴代ポルトガル王の彫像が並びます。16世紀ごろから修道士たちは芸術活動に力を注ぐようになったことを背景に、現在の広間のようになりました。

ドン・ディニス回廊

別名「沈黙の回廊」とも言われたこの回廊では、会話は一切禁止されており、修道士が瞑想にふけった場所でした。回廊中央の中にはイスラム統治時代の名残でもあるオレンジの木が植えられており、シンプルな造りの修道院に彩りを添えています。

僧の広間・食堂・厨房

大きな煙突が存在感いっぱいの厨房には、7頭の牛を丸焼きできたという大きな釜戸や当時の最先端技術で設けられた水場などが残ります。ここで1000人近い修道士の食事が日々作られました。

厨房で作られた食事をいただく食堂には、幅35cmほどの極端に細い扉があります。これは、「この幅を通り抜けられないと太り過ぎ認定」という扉でした。質素さに重きを置くシトー派修道士たちは、太ることについてもNGだったのですね。

アルコバサ修道院(Mosteiro de Alcobaça)
住所:Praça 25 de Abril, 2460-018 Alcobaça
営業時間:9:00~18:00(10月~3月) 9:00~19:00(4月~10月)
休業日: 1/1・聖日曜日(イースターサンデー)・5/1・8/20・12/25
入場料:6€ ※バターリャ修道院、トマールのキリ0修道院とのセット券15€(7日間有効)
HP: アルコバサ修道院

アルコバサのおすすめグルメ

修道院のある町には必ず老舗のお菓子屋さんがある…といっても過言ではないほど、修道院とお菓子は切り離せない存在。ポルトガルに数多く存在する伝統菓子の多くは、修道院発祥とも言われています。

アルコバサにもまた、1957年から続く老舗のお菓子屋さんが修道院の目の前にあります。「パステラリア・アルコア」という名のこちらのお店は、国内の菓子コンテストなどで、数々の受賞を誇る有名店。ナタを始めとする数々のお菓子が並びますが、とりわけ名物とされているのが、コルネのようなお菓子「コルヌコピア(Cornucópia)」です。円錐型に揚げたパリッと硬い生地に卵黄のクリームが詰まったお菓子は、食べ歩き菓子にもぴったり。好みでシナモンをふりかけていただきます。

2店舗がリスボンのシアード地区にもあるので、アルコバサまで足を伸ばすことが難しくても、老舗伝統菓子の味がリスボンでも味わえますよ。

パステラリア・アルコア(Pastelaria Alcôa)
住所:Praça 25 de Abril, nº 44 Alcobaça
営業時間:8:30~19:30
HP:パステラリア・アルコア

スポットマップ

まとめ

ポルトガルではドラマや映画にもなっていて、知らない人はいないとも言われるペドロとイネスの物語。アルコバサ修道院を訪れると、中世時代に生きたこの男女2人のストーリーにより興味が湧くのではないでしょうか。そんなあなたにはぜひ、コインブラの町にある「涙の泉」も併せて訪れてみることをおすすめします。

※各施設・店舗の情報は2021年1月の情報です。今後変わる可能性がありますので、最新の情報は公式HPなどでご確認ください。

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