世界遺産の町シントラ-風光明媚な景観の中にある個性的な建造物たち

リスボンから日帰りで行ける世界遺産の町シントラは、観光地としても大人気。緑豊かな山や森の中に、ポルトガルの歴代王家の離宮や特色ある建造物が点在する、魅力にあふれた町です。この記事ではシントラへの行き方から、現地を回るお得なチケット情報、そしてシントラで見逃せない観光スポットを紹介します。

概要と歴史

リスボンから西へおよそ25kmの位置にあるシントラの町。その歴史は、8~9世紀にアフリカ北西部のイスラム教徒「ムーア人」によって築かれた、山の頂にあるお城に始まります。

12世紀にこの地がポルトガルに併合されたのちには、王家や貴族が憩いの場として過ごす宮殿が集い、貴族文化の中心市として栄えました。19世紀以降は、各国の芸術家も多く訪れ、創作活動に励んだと言われています。

歴史を感じる中世前期の城跡から20世紀初めに完成した個性的な館まで、時代も様式もまったく異なる建築物が集まるシントラの町は、1995年に「シントラの文化的景観」として世界遺産に認定されました。その時代時代の文化を反映する建築物が多く残るシントラの町は、訪れる場所によって雰囲気ががらっと変化するのが特徴です。

基本情報 

まずはシントラへのアクセス方法とシントラ市内の交通手段、所要時間の紹介です。この後に紹介する見どころスポットの基本情報は、それぞれの紹介欄をご覧ください。

アクセス

アクセス難易度:★☆☆
 ★☆☆…簡単!ポルトガル観光定番スポット
 ★★☆…やや難。大都市からちょっと足を伸ばして
 ★★★…奥地。電車やバスを乗り継いで

シントラは、リスボンからのショートトリップ先として筆頭にあがる定番の観光地でもあります。リスボンから鉄道1本で行けるため、アクセスも良好。また、ユーラシア大陸最西端のロカ岬の経由地としても立ち寄る機会の多い町です。

リスボンからのアクセス

・鉄道:リスボンのロシオ(Rossio)駅からシントラ(Sintra)駅までおよそ40分(都市近郊線Urbanoのシントラ線利用)

鉄道はおよそ30分おきにロシオ駅から発車しています。シントラは終点駅なので、必ず行き先がシントラになっていることを確認して乗車しましょう。

シントラ市内の移動手段

シントラの町は山あいに歴史的な建造物が点在しており、ひとつひとつのスポットの間の距離がやや離れています。さらに急な坂道を登って行った先にたどり着けるペーナ宮殿やムーアの城跡などもあるので、基本的にはシントラ市内を走るバス(SCOTTURB社)を利用して回ることになります。

シントラの主要観光地を巡るのに使える路線は主に2つです。
・434番(Circuito da Pena):シントラ駅-シントラ王宮-ムーアの城跡-ペーナ宮殿-シントラ駅を結ぶルート
・435番(Villa Express 4 Palácios):シントラ駅-シントラ王宮-レガレイラ宮殿-モンセラーテ宮殿-シントラ駅を結ぶルート

シントラを走る上記のバスは、ペーナ宮殿までの片道が3.9€とやや割高。434番線の1日乗り降り自由チケット・6.9€(Circuito da Pena Hop-on Hop-off)や、シントラ市内のほか、ロカ岬への移動にも使える乗り降り自由チケット・15.10€(Turístico diário)をうまく活用しましょう。

また、リスボンからの移動を含めたシントラ観光におすすめのお得なチケットもあります。ここではその一部をご紹介します。いずれもリスボンで鉄道に乗る前に購入するとお得なチケットなので、忘れないようにしてくださいね。

いずれもチケットはリスボンの地下鉄のICカード「ヴィヴァ・ヴィアジェン(Viva Viagem)」にチャージする方法で購入します。また、リスボンの各種交通機関が乗り放題になる「リスボア・カード」でも、リスボン⇔シントラ間の鉄道移動に利用できるほか、ペーナ宮殿などカードを掲示してお得になるスポットがあります。

シントラ周遊パス(Bilhete Train & Bus)

リスボン近郊鉄道、シントラ~ロカ岬~カスカイス間のバス、シントラ市内のバス(434番・435番)が乗り放題になる1日フリーパス。
リスボンからシントラの観光スポットを巡り、さらにその日のうちにロカ岬まで行って戻ってくるプランの人におすすめです。
※通常およそ20€のところ、15.80€

シントラグリーンカード(Vantagens Sintra Green Card)

リスボン~シントラ間の鉄道とシントラ市内のバス(434番線)の1日乗車券、ペーナ宮殿とシントラ王宮の入場券、シントラ市内の博物館(全5ヶ所からいずれか一つ選択)がセットになったチケットです。シントラを1日かけてじっくりと巡りたい人におすすめ。
※通常およそ38€のところ、31€
(上記の内容にケルース宮殿が加わった39.50€のグリーンカードもあります)

観光の所要時間 

シントラの文化的景観:1日

シントラはロカ岬とセットで組まれるプランが多いので、半日ほどで2~3箇所を駆け足で回ることも多いです。しかし、世界遺産に登録されているスポットを始め、周辺には多くの美術館、そして駅周辺には有名なスイーツ屋やポルトガルレストランが建ち並ぶので見どころは尽きません。
なにより、一ヶ所一ヶ所が見ごたえ満載。ぜひ丸々一日をシントラに使って、じっくりと興味深い建造物を巡ってみてくださいね。

シントラの文化的景観の見どころ 

ここからは世界遺産シントラの見どころスポットを紹介していきます!

ペーナ宮殿 

シントラの駅から434番のバスでおよそ20分、「月の山(Monte da Lua)」と呼ばれる広大な国立公園の中の山道をくねくねと進んでいった先にあるのがペーナ宮殿です。バスを降りるとすぐ目の前にチケット売り場があり、入場門を通り抜けてさらに500mほどの坂を登った先にペーナ宮殿の入り口があります。

遠くからでもすぐに目に入るカラフルなたたずまいのペーナ宮殿は、ドイツのノイシュバンシュタイン城の建築を命じたルートヴィヒ2世のいとこ、フェルディナント2世の命で建築されました。ノイシュバンシュタイン城完成1年前の1885年に完成したペーナ宮殿は、さまざまな建築様式が混ざり合った不思議な存在感を醸しだす宮殿です。

青空に映えるポップでカラフルな外観は、写真映えも抜群です。まるでおもちゃのような可愛らしい印象のペーナ宮殿ですが、近づいて見るとイスラム風の模様が壁一面に描かれていたり、仰々しいモチーフが飾られていたりと見れば見るほど不思議な空間。

内部は、宮殿ならではのゴージャスな装飾、調度品が詰まっている豪華絢爛な空間です。また、宮殿の周りには広大な庭園も広がっていて、宮殿見学チケットで庭園の散策も可能。季節や時間帯によっては長蛇の行列ができるペーナ宮殿ですが、庭園は一日を通して人もまばらでシントラの自然を満喫できる隠れた穴場です。

ペーナ宮殿(Palácio Nacional da Pena)
住所:Estrada da Pena 2710-609 Sintra
営業時間: 9:00~18:30(入場は18:00まで)
入場料: 14€(ペーナ公園見学込み)
HP:ペーナ宮殿

ムーアの城跡 

ペーナ宮殿から北方面の山頂にある、かつてムーア人が築いたお城の名残がムーアの城跡です。城跡とはいえ、今も残る城壁はシントラの繁華街、シントラ・ヴィラから見上げても確かな存在感。かつての壮大なお城の気配がうかがえます。

ペーナ宮殿と同様に434番のバスでシントラ駅からおよそ15分。ペーナ宮殿のひとつ前の停留所です。ペーナ宮殿との距離は800mほどなので歩いて移動することも可能です。ペーナ宮殿とのペアチケットも購入できるので、混雑しそうな時期はムーアの城跡を先にしてペアチケットを購入しておくのがおすすめ。

また、シントラは山あいの町なので空模様の移り変わりが激しいです。せっかくムーアの城跡へ行くのであれば、色鮮やかなペーナ宮殿や緑に包まれたシントラの街並みがよりいっそう美しく眺望できるタイミングを見計らって登ることをおすすめします。

ムーアの城跡(Castelo dos Mouros)
住所:Castelo dos Mouros 2710-405 Sintra
営業時間: 9:00~18:30(入場は18:00まで)
入場料: 8€
HP:ムーアの城跡

シントラ王宮

多くのレストランやお土産屋で賑わうシントラ・ヴィラを見守る位置にシントラ王宮はあります。シントラの駅から歩いて10分ほど、また434番と435番のバスどちらでもアクセスができるので、旅程に組み込みやすいスポットですね。

ムーア人が残した建物を増改築して今の姿になったシントラ王宮は、真っ白な壁とオレンジ色の屋根に見られるように、外観は王宮の名前からイメージするのと比べるとシンプルでおとなしい印象です。しかし王宮内部は、時代ごとにさまざまな建築様式で増築を繰り返した豪華絢爛な空間が広がります。ポルトガルの王家がおもに夏の避暑地として過ごした離宮としての役割を担ったシントラ王宮。王家のこだわりが詰まりに詰まった部屋の数々は見ごたえ満載です。

シントラ王宮(Palácio Nacional de Sintra)
住所 Largo Rainha D. Amélia 2710-616 Sintra
営業時間: 9:30~18:30(入場は18:00まで)
入場料: 10€
HP:シントラ王宮

レガレイラ宮殿

シントラに数多く存在する宮殿のなかでも、ひときわ特異な存在感を放つのがこのレガレイラ宮殿です。シントラの駅からシントラ王宮を経由して、歩いて20分ほど。または435番のバスに乗って向かうことも可能です。

繁華街の賑わいから少しずつ森の気配が強まってきた頃に、木々の中から現れるグレー色のレガレイラ宮殿は、煌びやかで豪華な宮殿というよりは、どこかミステリアスな雰囲気の不思議なオーラをまとっています。もとは王族の別荘であった館が、20世紀の初頭に改装されて今の姿になりました。

宮殿とともに見逃せないのが、宮殿の周りに広がる庭園です。チケット売り場でもらえるマップからは、探検マップのようなワクワク感が湧きあがります。どこに出るのかわからない真っ暗な洞窟、渦巻き状の井戸や小池の中の飛び石など、気分はまるでRPGゲームの主人公。不思議な造りの庭園を冒険できますよ。

レガレイラ宮殿(Quinta da Regaleira)
住所:Quinta da Regaleira 2710-567 Sintra
営業時間: 10:00~18:30(入場は17:30まで)
休館日:1/1、12/24、12/25
入場料: 10€
※90分のガイド付きツアー(ポルトガル語・英語・スペイン語):15€
HP:レガレイラ宮殿

【ここに来たらはずせない!】おすすめのグルメ

シントラを訪れたら必ず食べたいスイーツが2つあります。
ひとつめはチーズを使ったお菓子の「ケイジャーダ(Queijada)」。ポルトガル全土にあるスイーツですが、とくにシントラのものが有名です。餃子の皮を思わせる器のパリッとした食感のあとにくる、しっとり・ほろっと食感。チーズの風味は控えめで、優しい味わいの一口サイズのお菓子です。

そしてもうひとつが「トラヴェセイロ(Traveseiro)」。長方形のサクサクとしたパイ生地のなかにアーモンドと卵から作られたクリームが入ったお菓子です。

いずれもシントラの町にあるカフェや食堂でよく目にするお菓子ですが、とくに有名なのが「カーサ・ピリキータ」という老舗カフェ。シントラの町を表すかのような優雅で可愛らしい店内で、伝統のあるお菓子を食べながらシントラを味わい尽くしちゃいましょう。

【店舗情報】カーザ・ピリキータ(CASA PIRIQUITA)
住所: R. das Padarias 1/18, 2710-603 Sintra
営業時間:9:00~20:00
定休日:水曜日
※同じ通りに2号店もあります(火曜定休)
HP:カーザ・ピリキータ

スポットマップ

まとめ 

思わず深呼吸したくなる、緑に囲まれた世界遺産の町シントラ。歴代の王家や貴族が魅了され、憩いのひと時を過ごしたその理由がシントラを訪れるときっとわかるはずです。ぜひシントラを訪れた際は、自然の中にたたずむ個性豊かな歴史的遺産をゆっくりと堪能してみてくださいね。
 
※各施設・店舗の情報は2020年8月の情報です。今後変わる可能性がありますので、最新の情報は公式HPなどでご確認ください。

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