太古の自然が残る!マデイラ島の照葉樹林ラウリシルヴァ

ヨーロッパを代表するリゾート地として知られるポルトガルのマデイラ島。マデイラワインやサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドの生まれた土地として、その名前を知っている方もいるでしょう。実はこのマデイラ島は、太古からの自然環境を残す奇跡の島でもあるのです。今回はマデイラ島の定番観光スポットから少し目線を変えて、緑と湧き水がつくりだす世界遺産「マデイラ島の照葉樹林」を見ていきましょう!

歴史と概要

リスボンから飛行機でおよそ1時間半~2時間、大西洋のモロッコ沖に浮かぶマデイラ島。年間を通しての温暖な気候や豊かな自然環境から、しばしば「大西洋の真珠」とも称され、ポルトガル国内・国内問わず多くのバカンス客を魅了してやまない島です。

ポルトガル人がマデイラ島を発見したのは、15世紀の大航海時代のことです。航路開拓の過程で、同じポルトガルの離島アソーレス諸島よりも少し前に発見をされました。ポルトガル人が上陸した当時のマデイラ島は、島全体が濃い木々に覆われていたことから「マデイラ=木」と名付けられます。

ポルトガル人の入植により島の南部を中心に開発が進んだマデイラ島ですが、今もなお島の北部を中心に濃い森林で覆われています。「ラウリシルヴァ(照葉樹林の原生林)」と呼ばれるこの森林は、月桂樹を始めとする太古の木々が残る神秘的な原生林なのです。

※ラウリシルヴァという言葉は、ラテン語のLaurus(月桂樹)とSilva(森林)に由来しています。

はるか昔、ヨーロッパ大陸はラウリシルヴァが広がる大地でした。しかし250万年前に始まった氷河期により、ヨーロッパ全土の自然環境は一変。ラウリシルヴァはヨーロッパ大陸から消滅しました。しかし、氷河期の影響を受けることのなかったマデイラ島では、氷河期以前…数千万年前もの生態系が維持され、今日まで続いているのです。

本土ではもう見ることのできない生態系が残り、絶滅危惧種を含む数多くの動植物が共存している神秘的な原生林は、アソーレス諸島やカナリア諸島などでも見られます。しかし、マデイラ島のラウリシルヴァはその中でも最大規模で保存状態も良いことから、1999年にはポルトガルで唯一の自然遺産として世界遺産に認定をされました。

基本情報・アクセス

マデイラ島へのアクセス

リスボン空港からマデイラ島の東部にあるマデイラ空港までは直行便でおよそ1時間半~2時間。空港からマデイラ島の中心都市フンシャルまでは空港バス(Aerobus)が運行されています。(市街地までおよそ30分・片道5€/往復8€)

また、海岸線沿いを中心に公共バスもあり、フンシャルからそのほかの町への移動にも利用できます。
参考:SAM(Sociedade de Automóveis da Madeira)社

マデイラ島のおもな町は、ほとんどが島の南部にあります。バスなどの公共交通機関も整っているので、町から町への移動に不自由することはあまりないでしょう。一方、世界遺産の照葉樹林はおもに島の北部を中心に広がっています。公共交通機関でのアクセスは困難なエリアなので、現地のツアーやタクシー、レンタカーなどを手配していくのが一般的です。

マデイラ島の照葉樹林「ラウリシルヴァ」の特徴

中心都市フンシャルを中心に、観光地からアクティビティ、グルメまで、挙げるときりがないマデイラ島の魅力の数々。ですが、今回はマデイラ島の照葉樹林「ラウリシルヴァ」に絞ってその特徴をお伝えします。

世界遺産に認定をされているラウリシルヴァはマデイラ島全体のおよそ20%を占めており、主に島北部の300〜1300mの高さにあります。ほとんどがマデイラ自然公園(Parque Natural de Madeira)に含まれる、保護地区でもあります。トレッキングコースなども整備されているので、歩きながら太古の自然を感じることができますよ。

照葉樹は、1年中青々とした葉っぱを茂らせる植物の中でも、特に葉に光沢と厚みがあるのが特徴です。マデイラ島の照葉樹林も、ツヤツヤとした緑の木々が季節を問わず茂っています。

標高が低めのエリアは気温も高く比較的乾燥もしていて、植物は多肉植物や低木が中心。標高が高くなるにつれて気温は低く、湿度は高くなり、松の木やミモザ、ユーカリ、シダなどの木が目立ち始めます。標高が600mを超えると湿度は85%を超え、しばしば霧がかかった幻想的な雰囲気に包まれます。

霧に包まれた木々の葉っぱには1日中水滴が滴り、森林の至る所で湧き水の音が聞こえてきます。そして、この湧き水がマデイラ島の人々の生活にとても欠かせないものなのです。湧き水を島の南部へと運ぶために設けられたのが、灌漑用水路の「レバーダス」。今もこの水路は島の至る所で活用をされており、マデイラの人々にとって欠かせない設備となっています。

マデイラ島の植林活動

15世紀のポルトガル人による上陸ののち、開発の為に島の南部を中心に土地が広く焼き払われました。その結果できた肥沃な土地でブドウ栽培を行い、島の一大名産物でもあるマデイラワインが生まれたのです。

しかし、この開発は弊害ももたらしました。2010年、マデイラ島は大規模な洪水に見舞われます。この際、特に被害が大きかったのが島の南部でした。森林が削られた南部は大量の雨水が大地に吸収されず、町や畑への大規模な水害につながってしまったのです。一方島の北部の照葉樹林が残るエリアは、森林の保水システムにより大規模な被害は免れました。

このことから近年、島の人々を中心に失われてしまった照葉樹林を復活させようという動きも高まっています。マデイラ島の各地で見られるネットで守られた若い木々は、植林活動のワンシーンなのかもしれません。

アクセスマップ

まとめ

太古から続く、手つかずの自然が残るマデイラ島の照葉樹林のご紹介でした。湧き水の音、そして清らかな空気を感じながらのトレッキングは究極の癒し空間。マデイラ島を訪れる際はぜひ山奥のラウリシルヴァにまで足を伸ばして、森林浴を楽しんでくださいね。

※各施設・店舗の情報は2021年2月の情報です。今後変わる可能性がありますので、最新の情報は公式HPなどでご確認ください。

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